不動産投資の利回り計算 - 表面利回りvs実質利回りの実例2026

不動産投資で物件比較をするとき、必ず最初に出てくるのが「利回り」という指標です。同じ物件でも見せ方によって表面利回り10%と実質利回り5%の両方が成立することがあり、ここを混同したままシミュレーションを進めると赤字物件を高利回り物件と勘違いするリスクがあるとされています。本記事では、2026年現時点での実務に即した利回り計算式と、実例ベースでの差を整理します。

📐 表面利回りの計算式と落とし穴

表面利回り(グロス利回り)は、物件価格に対する年間家賃収入の比率です。広告や物件サイトに大きく表示される「利回り◯%」は、ほぼこの表面利回りを指すとされています。

表面利回り (%) = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100

よくある落とし穴

  1. 満室想定:実際には空室期間があるのに、広告の表面利回りは「常時満室」前提で計算されている
  2. 諸費用未反映:物件価格に登記費用・仲介手数料・不動産取得税などが含まれていない
  3. 管理費・修繕積立金の控除なし:区分マンションでは月額管理費が家賃から差し引かれるが反映なし

そのため表面利回りはあくまで「ざっくり物件比較するための指標」と位置づけ、購入判断には使わないのが実務的とされています。

📐 実質利回り(ネット利回り)の計算式

実質利回り(ネット利回り、NOI利回り)は、運営諸費用を控除した実際の手残りベースの利回りです。

実質利回り (%) = (年間家賃収入 - 年間運営費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100

年間運営費に含めるべき主な項目は次のとおりです。

項目 想定範囲 備考
管理費・修繕積立金 家賃の10〜20%相当 区分マンションは特に大きい
賃貸管理委託料 家賃の3〜5% サブリースの場合はさらに高い
固定資産税・都市計画税 物件評価額×1.4〜1.7% 立地により変動
火災保険・地震保険料 年間1〜3万円 木造/RC造で差あり
修繕予備費 家賃の3〜5% 設備故障対応用
空室損 家賃の5〜10% 想定空室率を加味

購入時諸費用には登記費用・不動産取得税・仲介手数料・ローン事務手数料・印紙税などが入り、物件価格の 6〜8% 程度を見込むのが一般的とされています。

🧮 実例:同じ物件で表面 vs 実質を比較

具体的な数字で差を見ます。実在の物件ではなく、典型的な区分マンション投資の想定例です。

物件価格        : 2,000万円
購入時諸費用    : 160万円(物件価格の8%)
年間家賃収入    : 144万円(月額12万円 × 12ヶ月、満室想定)
管理費・修繕積立: 月1.5万円 × 12 = 18万円
管理委託料      : 家賃の5% = 7.2万円
固定資産税等    : 8万円
保険料          : 1.5万円
修繕予備費      : 家賃の3% = 4.3万円
空室損          : 家賃の5% = 7.2万円
年間運営費合計  : 46.2万円

ここから利回りを2通り計算すると次のとおりです。

指標 計算式 結果
表面利回り 144 ÷ 2,000 × 100 7.20%
実質利回り (144 - 46.2) ÷ (2,000 + 160) × 100 約4.53%

表面利回り7.2%で「優良物件」に見えても、実質ベースでは4.5%まで落ちることが分かります。さらにここからローン金利を差し引くと、手残りキャッシュフローはさらに圧縮されるとされています。

📊 判断基準:実質利回りの目安

実質利回りの「合格ライン」は物件種別と立地で大きく変わるため、絶対的な基準はありません。一般的に語られる目安は次のとおりです。

  • 東京23区・区分マンション(築浅):実質3.5〜5.0%
  • 地方政令市・区分マンション:実質4.5〜6.0%
  • 東京近郊・木造一棟アパート:実質5.0〜7.0%
  • 地方・木造一棟アパート:実質7.0〜10.0%

⚠️ 注意:地方の高利回り物件は表面では魅力的に見えますが、空室率の上振れ・修繕費の上振れ・出口戦略(売却)の難しさがリスク要因になりやすいとされています。利回りの数字だけで判断しないでください。

🧠 計算で見落としがちな3項目

利回り計算で投資家が特に見落としがちな項目を3つ挙げます。

  1. 大規模修繕の積み増し:区分マンションでは10〜15年ごとに修繕積立金が値上がりする傾向があり、購入時の金額をそのまま継続利用すると将来の収支が悪化します
  2. 賃料下落カーブ:新築から10年で賃料が10〜15%下落するケースがあるとされており、長期シミュレーションでは年1%程度の下落想定が無難です
  3. 退去時のリフォーム費:退去ごとに5〜30万円の原状回復費が発生するため、入居者回転が速い物件ほど影響が大きいです

これらを年間運営費に折り込んだうえで実質利回りを再計算すると、購入後5年・10年時点で利回りがどう推移するかも見えてきます。

❓ FAQ

Q1: 表面利回りは見る意味がないのですか?

物件をスクリーニングする一次フィルタとしては有用とされています。同じ立地・同じ築年数の物件群を横並びで比較する際は、表面利回りの大小がある程度の妥当性指標になります。ただし最終判断は実質利回り+キャッシュフロー+出口価格まで含めて行うのが原則です。

Q2: 実質利回りに金利は含めるべきですか?

実質利回り(NOI利回り)の計算式には通常、金利は含めません。金利は資金調達側の話であり、物件そのものの収益力を測る指標としては運営費のみを差し引くのが標準的とされています。金利を含めて評価したい場合は「キャッシュ・オン・キャッシュ・リターン(自己資金利回り)」という別指標を使ってください。

Q3: 表面利回りと実質利回りの差はどの程度が普通ですか?

物件種別によりますが、区分マンションで2〜3ポイント、一棟アパートで1〜2ポイントほど実質利回りが低くなるケースが多いとされています。差が4ポイント以上開く場合、運営費が異常に重い物件か、表面利回り側がアグレッシブに設定されている可能性があるため、内訳を精査してください。


利回り計算は不動産投資の入口でありゴールではありません。表面利回りで物件をスクリーニングし、実質利回りで購入判断、キャッシュ・オン・キャッシュで自己資金効率を確認、という3段構えで使い分けることで、広告の利回りに惑わされにくくなるとされています。